エリアガイド大田原

【自然と歴史、民話の里】

県道の四十四のカーブを曲がり山道を四百四十メートルの高さ登り切ると目の前が大きく開けて、大田原に入ります。目の前に広がる田んぼは一万年以上以前、ここは大きな湖でした。氷河期と間氷期が繰り返されたころに土砂が堆積した、更新統(洪積層)という地層でできています。
この大田原の魅力は、豊かで変化に富んだ自然、そして鎌倉時代から現在まで、隠里のように保たれてきた数奇な村の歴史と生活です。その中から、いくつもの民話も生まれています。

■大田原の自然

大田原を囲む篠山、高雄山、大田原山はそれぞれ溶岩でできていて、この地域に活発な火山活動がありました。

《水晶》
二の沢地籍には火山灰が露出した場所があり小さな水晶が沢山発見できます。

《黄鉄鉱》
荏沢川の崖では結晶構造をなしてキラキラと輝く黄鉄鉱が数多く見られます。

《クマゲラ》
1999年6月、大田原で一羽のクマゲラの雛が巣立ちました。これが、今まで知られている最も西で生まれたクマゲラです。

《イチイの巨木》
松林一族の墓域の中央に直径1メートルを超す大きなイチイの木があります。太い枝の年輪の幅から想定される樹齢は七百年を超えるものでした。松林親信が移ってきて776年。気になる数字です。

イチイの巨木

《春の妖精たち》
四月。日差しが暖かくなると、いち早くカタクリ、イチリンソウ、ニリンソウ、などの小さな春の妖精たちが目を覚まし、花を咲かせます。そして、ほかの木や草が葉を茂らせる頃にはひっそりと姿を隠します。
六月。カタクリの生えていたところに行ってみましょう。カタクリの種を運んでいるアリを見ることができるでしょう。カタクリには種にエライオソームと言うアリの好物を付けておき、アリに種を運んでもらう作戦なのです。

カタクリの花

《ツクバネ(寄生植物)》
“羽根突き”のハネにそっくりなかわいらしい実を付ける1メートル程の高さになる低木です。
雄の木と雌の木があります。地下で松、杉、桧、モミなどの根に寄生して生活しているので、山から抜いてきても育てることはできません。

ツクバネ

《ヒカゲノカズラ(原始的な植物)》
植物は光を求めて上に伸びる茎から光を受ける細い枝葉を伸ばします。原始的なヒカゲノカズラはまだこの主軸と枝の区別が発達せずY字型に分岐するだけの植物です。

■大田原の景色《雲海》

マレットゴルフ場からは、千曲市市街が一望できますが、年に何回か早朝、その市街が一面の雲海に埋まることがあります。

幻想的な雲海

■夜の大田原
周囲を山に囲まれ、漆黒のとばりに閉ざされます。

《星》
七月、大田原の空は南から北へ天の川で二分されます。南の空低くサソリ座の東、南斗六星など射手座の星々が並ぶ辺りで天の川がひときわ明るく広がります。この方向に、私たちの銀河系宇宙の中心があります。
十一月、天頂を見上げましょう。ボンヤリとした光りのシミが見えるはずです。私たちの隣の小宇宙、肉眼で見られる唯一の小宇宙、アンドロメダ銀河です。
一月、りゅう座流星群、八月、ペルセウス座流星群、十二月、双子座流星群。大田原の空を沢山の流れ星が走ってゆきます。

《ホタル》
六月中旬になるとあちこちの水辺からゲンジボタルが飛び立ちます。強く明滅しながら飛んでいるのはほとんどが雄です。水辺の草の上で弱い光りの信号を送りながら雄を待っている雌が見つかるはずです。水際のコケの間に卵がうっすらと光っているかもしれません。
九月、林の縁の草の上に目をこらしてみてください。点滅しない小さな光りが動いています。クロマドボタルの幼虫がカタツムリを探し歩いているところです。

《鵺(ぬえ)》
平安時代、京都の貴族たちを震え上がらせ、源三位頼政が退治したと言われている妖怪“ぬえ”が大田原に出没します。
ピィーーーともの悲しげな声が真っ暗な森の中から聞こえてきます。しばらくすると別の方から聞こえてきます。夜中じゅう不吉な声に取り囲まれます。
大田原で「凶作鳥」と言っているトラツグミの声です。

真っ暗に暮れる大田原の夜は怪しく、美しくファンタジックです。